獺祭と三菱重工業は、共同開発した宇宙用醸造装置と清酒の原材料が、2025年10月21日(火)にH3ロケット7号機で打ち上げられることが決定したと発表しました。
これは、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟で、世界初となる宇宙空間での清酒醸造を目指す「獺祭MOONプロジェクト」の一環です。
月面での酒蔵を目指す「獺祭MOONプロジェクト」
「獺祭MOONプロジェクト」は、将来の月面生活におけるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目的として、月面での酒蔵建造と日本酒「獺祭」の醸造を目指す壮大な計画です。2024年から始動したこのプロジェクトの第一段階として、ISSでの醸造試験が計画されました。
今回の試験は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提供する「きぼう」有償利用制度を活用して実施されます。月面の重力(地球の約1/6)を模擬した環境下で清酒醸造を行い、宇宙空間での発酵プロセスに関する貴重なデータを取得することが狙いです。
オールジャパンで挑む宇宙醸造ミッションの詳細
醸造装置と原材料(米、麹、酵母、水)は、2025年10月21日(火)10時58分頃に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。打ち上げには、2024年から運用が始まった日本の新型基幹ロケットH3が使用されます。
ISSへの物資輸送は、この打ち上げで初めて実証される国産の新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)が担います。ISS到着後、「きぼう」日本実験棟で醸造装置がセットアップされ、水を注入することで日本酒特有の複雑な発酵反応である「並行複発酵」が開始されます。醸造試験に関する作業は、油井亀美也宇宙飛行士が担当することを目指し、JAXAと調整が進められています。
本ミッションでは、酒造りに関する部分を獺祭が、宇宙用醸造装置の開発を三菱重工が担当します。さらに、打ち上げからISSでの運用に至るまで、JAXAをはじめとする日本の関係機関や企業が連携しており、まさに「オールジャパン」の技術力を結集した挑戦です。

宇宙で醸された日本酒の行方
軌道上での醸造試験は、打ち上げから10日程度で開始され、約2週間にわたって行われます。地上からの遠隔モニタリングを通じて、月面重力に相当する1/6G環境下での発酵の様子が詳細に観察されます。
宇宙で発酵を終えた醪(もろみ)は、ISS内で凍結保管され、早ければ2025年内に地球へ帰還する見込みです。回収された醪は地上で解凍後に絞られ、完成した清酒の半分は購入者の元へと渡ります。残りの半分は、宇宙醸造サンプルとして詳細な科学的解析が行われ、そのデータは今後の日本の宇宙産業の発展に役立てられる計画です。