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デザートみたいなお酒!?甘口な高級酒「貴醸酒」って知ってる?

「とっておきの日本酒」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?酒好きのNOMOOO読者の中には「貴醸酒」という単語を思い浮かべた方も少なくはないと思います。 とっておきの日本酒とか、高級な日本酒とか聞くと、初心者ではなく …

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とっておきの日本酒」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?酒好きのNOMOOO読者の中には「貴醸酒」という単語を思い浮かべた方も少なくはないと思います。

とっておきの日本酒とか、高級な日本酒とか聞くと、初心者ではなく玄人が飲むようなイメージをお持ちかと思いますが、貴醸酒は初心者さんにも安心してオススメできるタイプの日本酒なんですよ。

その理由はとっても簡単。貴醸酒は凄く甘いのです!

今回はそんな、日本酒の概念を少し変えてしまうような逸品「貴醸酒」をご紹介します!


貴醸酒とは?


貴醸酒って何?」と聞かれて一言で答えるなら「日本酒で醸した日本酒」というのが一番しっくりくるでしょう。

もう少し細かく説明すると、貴醸酒は普通の日本酒が仕込み水を使用する場面で、日本酒を使用しているのです!

当然、水ではなく酒なのでコストが非常にかかり、それゆえ特別な日本酒、贅沢な日本酒と認知されています。

一般的な日本酒の醸造過程

さらに詳しく説明していきましょう!一般的な日本酒は、基本的に三段仕込みという方法で造られています。

三段仕込みとはその名の通り、三段階に分けて日本酒を仕込むこと。この三回の各工程では当然、日本酒を仕込むための水「仕込み水」が使用されます。

仕込み水は、日本酒造りにおいて非常に重要な”材料”の1つ。個性を決定づける要素でもあるのです。

ある時、三段仕込みの最終段階にあたる「留仕込み」の時に「仕込水ではなく日本酒を使おう!」という試みが実施されました。

そうして誕生したのが貴醸酒です。ちなみにこの名称は、貴醸酒協会という40社ほどが加盟している団体の「商標名」であり、この協会に加盟していないと貴醸酒という名前を使用できないそうです。

未加盟の蔵の貴醸酒造りのお酒には、再醸仕込み・醸醸・三累醸酒といった別の名前が付けられ販売されています。

貴醸酒の歴史


国賓の晩餐会で、なぜ日本酒が振舞われないのか?」貴醸酒が生まれたのは、こんな素朴の疑問が発端でした。

貴醸酒の歴史は浅く、誕生したのは1973(昭和48)年に国税庁醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)で造りだされたのが始まりです。

その当時、国賓の晩餐会で海外から来日したお客様をもてなすために使用されたのは、フランス産のワインやシャンパン。
伝統ある日本酒が使用されないことを疑問に思った、当時の国税庁醸造試験所の研究室長"佐藤信"博士は、国賓をもてなすに相応しい高価な日本酒を造る必要があると考え、水の代わりに日本酒を使用した日本酒を造ることを思いつきます。

そうして誕生したのが貴醸酒。名前の由来は「貴腐ワインに比較されるタイプの高級日本酒」というところから来ているのだとか。

古代酒の作り方と同じだった?!

ちなみに、この酒で酒を仕込む貴醸酒の造り方は、偶然か必然か、平安時代の古文書延喜式(えんぎしき・927年)」に記されている宮内省造酒司による「しおり」と呼ばれる古代酒の製法と同じだったそうです。

伝統ある日本酒の価値を見直そうと新しく考案された造り方が、実は遥か昔に考案され実施されていた造り方だった、、、凄くロマンを感じるエピソードですね!

また同時に過去の人々の、現代にも通ずる優れた知恵と技術に感服するばかりです。

なんで貴醸酒が甘くなるの?


貴醸酒がどういった日本酒かを理解したところでところで、「なぜ甘くなるの?」という疑問についてお答えしていきましょう。

その秘密を解き明かすには、まず並行複発酵(へいこうふくはっこう)という働きについて説明しなければなりません。

並行複発酵とは、麹の酵素がお米のデンプンを分解して糖に変える「糖化」と、清酒酵母がその糖を分解してアルコールに変える「発酵」を同時進行で行う働きです。

清酒酵母は、糖を分解してアルコールに変える働きをがあります。しかし、この清酒酵母は、発酵が進みある一定以上のアルコール度数(22度程度)になると、自分で生み出したアルコールによって弱り死滅してしまうという性質があるのです。

そのため、発酵がゆるやかになった後は最終的には止まってしまいます。

この、「一定以上のアルコール度数になると糖を分解してアルコールに変える働きが最終的には止まる」という性質が甘さの秘密なのです。

仕込みに酒を使うことでアルコール度数が高まるのがポイント

水・水・水と仕込む通常の三段仕込みと違い、水・水・酒と仕込む貴醸酒の場合は途中でアルコールが足されることになります。

そう、勘の良い人はもうお気づきかもしれませんが、仕込みにお酒を使うことで本来であれば分解されるはずだった糖を分解する前に、アルコール度数が一定以上に達してしまう、という現象が引き起こされるのです。

糖が分解されずそのまま残れば、当然その味わいは甘くなります。この、糖化の働きは変わらないが、発酵の働きは仕込みで酒を入れることで緩やかになり(もしくは止まる)、糖化の働きが優勢になり甘くなる、というメカニズムが甘い日本酒、貴醸酒を産み出しているのです。

オススメの貴醸酒

華鳩 貴醸酒8年貯蔵

華鳩 貴醸酒8年貯蔵」は、広島県呉市の榎酒造が醸す貴醸酒です。

貴醸酒が開発された翌年、1974年には貴醸酒製造を開始したという、業界でパイオニア的存在である同蔵自慢の一本。この華鳩ブランドは、既に20年以上の実績を誇り、国内だけに留まらず海外でも人気を博しています。

とっておきの貴醸酒を更に8年間熟成させ、丹精込めて仕上げられた同商品は、まるで紹興酒のような甘口が特徴。食後酒として飲むのがオススメな他、アイスクリームにかけれて食べれば、大人なスイーツを堪能できること間違いなしです!

まとめ

いかがでしたでしょうか?貴醸酒がなぜとっておきのお酒なのか、そしてその高級な甘さの秘密をお分りいただけたのではないでしょうか。

日本酒の概念を覆すような甘口な味わいは、日本酒初心者さんや女性にもオススメ。相手を選ばず活躍すること間違いなしの貴醸酒は、特別な日に楽しんでみるのが特に良さそうですね!是非あなたの日本酒ライフでも貴醸酒をご活用ください。

《三寺悠仁》

三寺悠仁

高知県の酔鯨酒造で2年間蔵人として勤務、現在はKURANDの商品開発に関わる日本酒のプロ。日本酒の素晴らしさを世に伝えるべく、日夜活動中。

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