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2019.12.16
日本酒

日本酒に「醸造アルコール」を入れるのはなぜ?本当の理由を教えます!

日本酒には、「醸造アルコール」が添加された日本酒と、添加されてない日本酒の2種類があります。

あまり日本酒に興味がない人だと、「アルコールが入ってる日本酒って安いんでしょ?」、「質が悪いやつだよね」など、なんとなく悪いイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。

近年の純米酒ブームの影響もあるのか、醸造アルコールの使用数量*は、平成23酒造年度~平成27酒造年度(平成23年7月1日~平成28年6月30日)の4年間で、白米1t当たり179.7Lから152.0Lにまで、年々さがってきています。
※アルコール分 100 度換算

純米酒の人気に押されがちな「醸造アルコール」が入ったお酒。
しかし、醸造アルコールが添加されているからこそ味わえるおいしさや役割があるのです。

今回は「醸造アルコール」に対する誤解を解きながら、その役割を解説するとともに、おいしい銘柄をご紹介したいと思います。

醸造アルコールとは

醸造アルコールとは、食用に用いられるアルコールのこと。
化学薬品などではなく、植物由来のもので、主にサトウキビを原料としたお酒です。

この醸造アルコールは香りや味がほとんどないため、日本酒の風味をじゃますることなく添加をすることができます

多くは大手アルコールメーカーが製造・販売し、各蔵元が購入して日本酒に使用するという流れですが、中には醸造アルコールを自分の蔵で作る蔵元も出てきているんだとか!

醸造アルコールは、ほぼ100%の純度のアルコールですが、清酒に加えられる際には30%程度の度数に調整されています。
なお、度数が36%以下になるように調整されたものが、甲類焼酎。チューハイや梅酒を造る際に使われるので、皆さんも知らないうちに飲んでいるかと思いますよ!

わざわざアルコールを入れるのはどうして?

アルコールを添加しないお酒がある一方で、なぜわざわざ醸造アルコールを添加する必要があるのでしょうか。
それは、添加によって得られるメリットがあるためです。

●飲み口がスッキリ・軽快・爽やかになる

醸造アルコールを添加した日本酒は、スッキリとした、爽やかな飲み口のものが多いです。皆さんも飲んだ時に感じたことがあるかもしれませんね。

これは、日本酒に含まれる糖分や酸による雑味の部分を、アルコールが抑える効果があるためとされています。

アルコールを加えたお酒は、いわゆる辛口のものが多いのですが、それはアルコール分30%ほどの醸造アルコールをもろみに加えると、日本酒度が必然的に高くなるためなんです。
ただし、辛く感じるか甘く感じるかは他の要素とのバランスもあるので、日本酒度が高いからといって、一概に辛口ではないので注意してください。

醸造アルコールを添加することでこのように味わいに変化を出すことができるので、日本酒に個性を出すためにも使われているようです。

●フルーティーな吟醸香が際立つ

吟醸酒や大吟醸酒から、華やかでフルーティーな香りを感じたことがないでしょうか?
この香りは「吟醸香」と呼ばれ、醪の中に含まれる成分で構成されています。実はこの成分、アルコールには溶けるものの水には溶けないのです。

醪を搾って酒粕と液体を分離する際、アルコール度数が低いと、香りの成分が液体に溶け出さず、酒粕に残ってしまいます。そこで、高濃度のアルコールを加えることで、香りの成分をお酒に溶け込ませることができるのです。

鑑評会用のお酒は、アルコール添加された大吟醸酒が多いのも、この理由が大きいのではないでしょうか。

●雑菌やカビなどの繁殖を防ぐ

お酒は品質管理をしっかりしないと、雑菌が増えたりカビが繁殖したりする恐れがあります。
こういった腐敗を防ぐ目的で、アルコールが添加されるのです。

さらに劣化も防ぐことができるので、長期間の保存も可能になります。

アルコール添加は江戸時代から行われていた!

日本酒がいつから造られ始めたのか、はっきりとした時期についてはいまだにわかっていませんが、お米の文化が伝わってきた弥生時代には造られていたのでないかとされています。

奈良時代になり、安定してお米を生産できるようになってからは酒を作る組織が国家に設けられて、日本酒は朝廷に献上されるようになりました。
その後、平安時代には神社や寺だけでなく民間でも酒造りがはじまり、室町時代には本格的な酒屋が登場したといわれています。

室町時代の段階で、原料のお米を生産したり、醪を濾して酒粕と清酒に分けたり、殺菌のために加熱処理を加えたりと今の日本酒造りの原形がすでに出来上がっていました
日本の酒造りの技術は世界的に見てもかなり進んでいたとされています。

江戸時代に入ると、産業としての酒造りがますます盛んになりました。
その中で、酒の品質を安定させ、腐敗を防ぐことが必要になり、アルコール添加が始まったとされています。
当時は現在のような醸造アルコールではなく、酒粕からつくられた粕取焼酎や、本格焼酎などが使われていたようです。

意外にも添加アルコールの歴史は長いのです。

悪いイメージはどこから?

上記のように、明確な目的があり、さらに歴史も長い醸造アルコールですが、どうしてネガティブなイメージをもたれてしまのでしょう?

それは、過去に行われていた「三倍醸造」にあるようです。

米不足対策で普及した三倍増醸酒

三倍増醸酒(三増酒)」とは、戦後の米不足の状況下で生まれたお酒。
米からできたアルコールの約2倍にもあたる醸造アルコールを添加、さらには甘味料や酸味料を加え、結果的に3倍に水増しされて造られた日本酒のことです。

当然品質はよくありませんが、低コストで大量に生産できることや、米不足のため低精白で雑味の多い純米酒より三倍増醸清酒が好まれるなど、戦後しばらくは普及し続けました。

現在は酒税法の改正により、3倍まで増量できなくなっているので、このようなお酒が「清酒」として出回っていることはありません

でも悪酔いするんじゃないの…?

醸造アルコールが入っていると悪酔いする、という話を耳にすることもありますよね。しかし、「醸造アルコールが入っている=悪酔いする」ということはまずないでしょう。

醸造アルコールの正体は甲類焼酎、つまり梅酒やサワーに使われているものと同じです。

三倍増醸酒のイメージから、「アルコールが添加された酒=質が悪い=体に悪い」のようなイメージがついてしまったのではないでしょうか。
現在では、アルコール添加は味わいの調整のために行うものなので、アルコールを添加して日本酒の方が度数が高いといったこともありません

※火入れと加水を行っていない生原酒に関してはアルコール添加されたものの方がアルコール度数が比較的高くなります

醸造用アルコールを避けることよりも、飲む量やその日の体調に気を配ってお酒を楽しむことが大切ですね!

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この記事を書いた人 Writer

なっさん

なっさん

元公務員の駆け出しライター。お酒が好きで仕事を探していたところをNOMOOO編集部に拾われる。飲むとベラベラ喋るらしいが、本人は覚えていない。飲み会よりも一人で立ち飲みに行くのが好き。

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