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”ブームから文化へ定着させるために” 「ナガノトレーディング」大平さんに聞いた!クラフトビールのこれから【前編】

専門店に限らず、カフェや居酒屋などあらゆる店舗に導入されるようになった「クラフトビール」。コンビニで取り扱っていることも多く、私たち消費者にとってはビールの選択の幅が増えてきました。

今でこそ一般的となった「クラフトビール」という言葉ですが、15年ほど前の日本では語られることがほとんどない、マイナーな存在でした

では、一体どのようにしてクラフトビールは日本に定着するようになったのでしょうか?

今回お話を聞いてきたのは、クラフトビールのブームが起きる前からアメリカのクラフトビールを取り扱っている、業界の”パイオニア”「ナガノトレーディング」代表取締役・大平朱美さん。

前編となる今回は、会社設立時の苦労やクラフトビールブームの背景についてのお話を中心に、お話いただきました。

ワイン輸入からはじまったナガノトレーディング

▲「ナガノトレーディング」代表取締役・大平朱美さん

-会社設立当初から、アメリカのクラフトビールをメインに事業展開する予定だったんですか?

大平さん:「いえ、実は全然違うビジネスモデルだったんです。当初は、主人のバルマスが1人でやっていた会社だったんですが、日本の美味しい食べ物をアメリカに紹介するビジネス、つまり海外への輸出展開をしようと始めた会社なんです。」

-それは意外ですね!どのタイミングでビジネスモデルを変更していったんですか?

大平さん:「バルマスが海外に紹介する日本の美味しいものを探しているうちに、『日本にはアメリカンダイニングやアメリカ風のレストランなどはたくさんあるのに、“本物のアメリカ”の物がない』というストレスが鬱積していたようなんです。

そこで、アメリカに日本の美味しいものを紹介する前に、まずは本物のアメリカの物や美味しいアメリカの商品を日本に紹介しようと思い立ち、輸入をメインに行なうことになったんです。」

-そうだったんですね!そこから、クラフトビールに舵を切り替えたと。

大平さん:「最初に取り扱っていたのは主に「ニューヨークワイン」、次に「バーベキューソース」「クラフトビール」であくまでワインの方が量が多かったです。

地理的な理由もあって、アメリカワインと言えば「西海岸のワイン」が印象面でもコスト面でも利点が高く、日本のマーケットではよく知られていました。しかし、バルマスの出身でもあるニューヨークのワインは、ほぼ知られていなかったんです。

それから、アメリカ人の食卓になくてはならないものの代表がバーベキューソース日本人にとっての”お醤油”みたいなものなのに、当時の日本のマーケットにはありませんでした。

そして、大学時代からずっとクラフトビールで育ったバルマスにとってはビールも大事。ということで始めたのですが、その当時はワインの取引先が10社あったのに比べてクラフトビールはたった2社でした。

-なるほど。ちなみに、会社名にもなっている「ナガノ」にはどんな意味があったのでしょう?

大平さん:「先にお話ししたように、設立当初は日本からアメリカへの輸出を考えていたので、名前として日本の名前を意識して探していました。その当時、アメリカ人にとって『長野オリンピック』のおかげで『長野』『ナガノ』というワードは海外の人にとって馴染みやすかったこともあり、会社名もナガノトレーディングにしたんです。

よく勘違いされるんですけど、長野県に本社があるわけでも(本社の所在は横浜です)長野さんという人が経営しているわけでもないんですよ(笑)

2012年に、有限会社から株式会社に業態変更をしたので、新しい会社名をつける絶好のチャンスだったのですが、いろいろと候補をあげてはみたものの『こんなユニークな名前は他にないし、名前の由来を絶対に聞きたくなる会社は他にない!』ということで、会社名は「株式会社」の冠を付け替えただけでそのまま「ナガノトレーディング」という名前になりました。

おかげ様で取材を頂く際、『社名』に関する質問を必ずと言っていいほど尋ねられますね(笑)」

-その後、ワイン事業を取りやめてクラフトビールを扱うようになったのにも理由があるんですよね?

大平さん:「ニューヨークのワインは、西海岸のワインに比べてテーブルワインが多くて価格自体もリーズナブル。でも日本への輸入を考えると、弊社のような小さな輸入業社が東海岸からもってくるには、経費が高くてたちまち高級ワインになってしまう。

それでも、お客様のお声があったので当初はワインがメインのビジネスだったのですが、リーマンショックがあってからはお取引先が業態変更されるケースが増え、わざわざ「ニューヨークワイン」にこだわられることが減ってきて、ワインの取り扱いは縮小していきました。

しかし、私たち夫婦はお酒が大好きなので『どうすればニューヨークのワインを広めることができるか』というワインの話を夜な夜な話していました。でも、その時私たちが飲んでいたのは「ビール」だったんですね(笑)

やはり、ビールは日本人にとってもデイリーに飲めるお酒ですし、飲んでいて楽しくなる。自分たちも大好きなクラフトビールを日本にもっと紹介していこう!ということで、クラフトビールをメインの事業にしていくことになったんです。それがちょうど2007年春くらいのときですかね。」

見向きもされなかった「クラフトビール」を広めるための苦労

▲ナガノトレーディングが扱うアメリカのクラフトビール

-今では当たり前のように使われますけど、昔は「クラフトビール」という単語さえも聞かなかったですよね。日本でクラフトビールを広めるにあたり、営業面では大変苦労なされたのでは?

大平さん:「もう全くダメでしたね(笑)100社に営業をかけて、1社興味を持ってくれれば成功というレベルでした。営業に行っても全然会話が噛み合わないんです!

『うちはアメリカのビール扱っているから間に合ってます〜』っていって、メキシコ産のコロナだったり。『バドワイザーがあるからけっこうです〜』みたいな感じで、海外のビールは全ていっしょくたにされていました。クラフトビールなんて見向きもされませんでしたね。

それこそ、何年も自分たちの給料が出せないくらいでした。それでも、自分たちが美味しいと思えるビールを地道に紹介し続けて、徐々に導入してくださる店舗さんも増えていったんです。」

-今でこそクラフトビールという単語をよく聞きますし、浸透してきた感じはするのですが、日本ではどれくらいの時期からクラフトビールが市民権を得るようになったんですか?

大平さん:「日本のクラフトビール自体は、おそらく2006年あたりから徐々に知られるようになったのではと思います。弊社がアメリカビールをプロモートするにつれ、2010年くらいから、ビール好きな駐在外国人をきっかけにして日本でアメリカのクラフトビールがさらに認知されてきたのかなと思いますね。

とはいえ、自宅の一室で生まれたばかりの娘の子守をしながらお得意先に営業の電話をするような毎日でしたから(笑)。

2011年にようやく従業員が雇えるようになり、自宅にあったオフィスを別にきちんと構え、ずっと念願だったショールームショップ「アンテナアメリカ」をオープンできたのが2013年のバレンタインデーでした。

そこが弊社としてのターニングポイントでもありますが、当時アメリカのクラフトビールが揃う店はほとんどなかったので、アメリカのクラフトビールが日本のクラフトビール業界に一石を投じるきっかけになったのかな、とも思います。」

-日本でクラフトビールが流行し始めた、直接的なきっかけっていうのは大平さんからするとどんな部分にあると思われますか?

大平さん:「IPA(アイピーエー)の台頭ですね。私たちも、現地でIPAを飲んだ時に衝撃を受けて、どうしても日本に入れたいといと思ったんです。IPAって他のビールスタイルに比べてとてもわかりやすいですし、これをアメリカのスタンダードという形でプロモートして日本に広めようということで動きを始めました。取材の時やイベントの時など、何かあるたびにIPAを宣伝していました(笑)

当初はIPAのことをお客様だけでなく業界にいらっしゃる人まで『イパ』と読まれたり、「インディアンペールエール(正解は「ン」がなくてインディアペールエール)」と堂々と告知されてしまったり...。それくらい馴染みがなかったところを私たちのような小さな力で「ビールのスタイル」を販促活動するのは大変な労力で(笑)」

-今聞くととても笑えるお話ですが、当時としては切実な問題ですよね(笑)

大平さん:「ようやく、IPAという単語もビアスタイルも日本でも広まったという時に、日本のメーカーさんやマイクロブルワリーも軒並みIPAを作り始めたような気がします。

ですから、『私たちがIPAを日本に広めたんだ!!』という自負のようなものがありますね(笑)」

インタビュー後編に続く...

後編は、10月30日(火)に配信予定!

後編では、ナガノトレーディングがこだわっている徹底した「温度管理」の秘密や”これからのクラフトビールのトレンド”について、熱く語っていただいてます!

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