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2019.3.24
日本酒

【日本酒のプロが教える】職人の技がすごい!日本酒業界大注目の「生酛」を徹底解説

皆さんは日本酒のラベルに「生酛」という文字が書かれているのを見たことはありますか?

難しい漢字で読めない!!という方も多いかもしれませんが、なんとなく美味しい日本酒のラベルにあるイメージがありますよね(笑)
実は最近、この生酛が日本酒業界を中心に再び注目を集めているんです。

ということで今回の日本酒講座では生酛について徹底解説していきます。

“なんとなく見たことある”から“知っている!”と胸を張って言えるようになっちゃいますよ!

生酛って読める?

生酛…

この漢字、読めますか?

「酛」という漢字は常用漢字ではなく、さらにあの難読漢字が出題されることでも有名な漢字検定でも対象外の漢字だそうなので、なかなかお目にかかる機会はありませんよね。

こちらは「きもと」と読みます。

ちなみに先ほどから何度も「生酛」や「酛」という漢字を使用していますが、きもととパソコンで入力しても変換できないのでコピーアンドペーストを繰り返しています。

これは長い戦いになりそうだ……。

生酛ってなんだろう

 

日本酒を造る上で重要な工程に、「酒母造り」というものがあります。
酒母とは、蒸した米・麹・水を用いて優良な酵母を培養したものを指し、その後の醪(もろみ)造りのベースになります。

酒母造りで大切なことは「日本酒造りに必要な酵母だけを増やすこと」。
そのためには、空気中にいる雑菌や日本酒造りに必要ない野生酵母が入らないようにしなければいけません。

この時に役立つのが乳酸です。
乳酸は酒母に入り込んでくる雑菌を死滅させ、酵母のみが過ごしやすい環境を作ってくれます。

生酛はこの乳酸を蔵に自生している乳酸菌を空気中から取り込んで作らせ、不要な菌の繁殖を防いで造った酒母を指すのです。

現在では、多くの蔵で酒母を造る際に「醸造用乳酸」という人工の成分を入れて、酵母を培養します。
こうして造った酒母を「速醸酛(そくじょうもと)」といいます。

速醸酛は技術が進化し、人工の乳酸が手に入るようになってから浸透した造り方、一方で生酛は精製された乳酸が手に入らなかった明治以前の造り方で生み出された酒母なんですね。

まとめて簡単に言うと生酛造りは「自然の乳酸菌の力で酒母を造る、昔ながらの方法」ということができます。

超重労働!生酛造りってこんなに大変

明治時代の蔵人たちを悩ませるほど、超重労働作業だった「生酛造り」。

その工程を少しご紹介します。

生酛造りでは、他の菌が繁殖しないように低温で蒸米を溶かし、酵母菌を培養させなければいけません。
そのために、小さめの桶に蒸米と水を入れ、櫂(かい)と呼ばれる棒で粥状にすり潰します。これを、「山卸(やまおろし)」と言います。
この作業を4時間ごと、3回繰り返します。ヘビーすぎる。

蒸米がドロドロになると、乳酸菌が働き始め乳酸を作るようになります。
この働きから、酒母の中は乳酸と糖でいっぱいになり、ほとんどの菌が生きていけない環境になっていくのです。

山卸は、作業だけでもだいぶ重いのですが、深夜から早朝にかけて極寒の中で行う必要があるのでさらに大変…
また生酛造りでは、酒母を造るのに約4週間もかかります。
速醸酛は約2週間で完成するので、その約2倍の時間がかかるです。
雑菌繁殖のリスクもあるので、本当に手のかかる造りなんですね。

明治時代以降になると、蔵人たちを苦しめていた「山卸」がなくなります。
「先に水の中で麹の酵素を溶かしてから蒸米を入れると酒母ができる」という大発見があったからです。

「山卸」の作業を廃止して酒母を造ったものが「山廃」と言われているもの。

 

一口に生酛といっても山卸をして造った「生酛系酒母」と山卸を廃止した「山廃系酒母」の2種類があるんです。

山卸がなくなったお陰で労働自体はだいぶ軽減されましたが、約4週間という長い月日と雑菌繁殖のリスクを抱えているという点は変わらないので、やはり速醸酛よりも手間のかかる造り方だと言えますね。

生酛造りのお酒ってどんな味?

 

生酛造りの味わいの特徴は「旨味とコク」です。

自然の営みの中で、野生の菌たちと戦い勝ち残ってきた強い酵母を利用して酒を造る生酛は、速醸酛では表現のできない複雑な味わいを楽しむことができます。

濃醇な味わいのため、食事との相性も良く食中酒としてもオススメ。乳酸菌たっぷりなので、チーズやクリーム系のお料理とも良く合いますよ!

まとめ

いかがだったでしょうか。

多くの蔵が速醸酛仕込みで日本酒を造っている中、生酛造りにこだわっている蔵もあります。手間暇かけて伝統の方法で醸した、生酛造りの日本酒は普通の日本酒では味わえない良さがあります。

ぜひ飲み比べてその違いを楽しんでみてくださいね!

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この記事を書いた人 Writer

三寺悠仁

三寺悠仁

高知県の酔鯨酒造で2年間蔵人として勤務、現在はKURANDの商品開発に関わる日本酒のプロ。日本酒の素晴らしさを世に伝えるべく、日夜活動中。

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