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国によって違う味わい!フランス産ラムの特徴&魅力を専門家が解説

今回は世界各国のラム酒の中でも、フランス産のラム酒にフォーカス!専門家の方に、フランス産ラムの特徴や味わい、魅力を教えていただきました。

お酒を選ぶ ラム酒
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国によって違う味わい!フランス産ラムの特徴&魅力を専門家が解説
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ハードリカーの中でも、日本人好みのお酒だとされている「ラム酒」。ラムコークやモヒートといったカクテルのベースで使われているだけではなく、ストレートやロックでも楽しめる汎用性の高いお酒として人気を博しています。

ラム酒といえば映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』で海賊が飲んでいたのが印象的なように、カリブ海や中南米のイメージがつきまとうかもしれません。しかし、実はヨーロッパでも盛んに生産されており国によってもその特徴は大きく異なるんです。

今回は、そんな各国のラム酒の中でもフランス産のラム酒にフォーカス!専門家の方に、フランス産ラムの特徴や味わい、魅力を教えていただきました。

教えていただいた専門家・多東千惠さん

「Tafia」オーナーバーテンダー。2008年に創設した「日本ラム協会」では、協会理事を務める。

そもそもラム酒ってどんなお酒?ラム酒の歴史

ラムは、もともと砂糖を作る時に取り除く「糖蜜」から作られていました。砂糖を2㎏造ると同時に糖蜜も1㎏できると言われています。糖蜜は砂糖の副産物、いわば第二次製品だったため、糖蜜を原料とするラムの発祥についての確たる文献は残っていませんが、現在はラムの世界的な共通認識として、16世紀にカリブ海のどこかの島(おそらくエスパニョーラ島かバルバドス)で初めて造られたという説が有力とされています。

フランスでラム酒は〇〇が飲むものだった!?

ラム酒について、フランス内の文献で最も古いものは、17世紀のドミニコ会修道士のジャン・バチスト・デュ・テルトルによる「アンティーユ諸島の歴史」です。

その文献の中で「黒人をいかにうまく使っていくかは蒸留酒の配給がカギである。」「つらい仕事を課したときのみに与える蒸留酒は、砂糖を作り出したときにボイラーから取り出した糖蜜と、ボイラーを支えるリブから生じるシロップとで作るものである」などの記載があるように、当初は奴隷たちや下級の白人が飲むお酒だったのだそう。

その後、フランスにおけるラム酒の転換期は何度か訪れますが、1693年にマルティニークに渡ったドミニコ会修道士がフランスのシャラント地方からコニャックの蒸留機や技師を持ち込んで、ラムの造り方を本国のコニャック同様に行うようにしたことが最も大きな転換となります。また、ラム酒が急速に広まった背景として、ラム酒が壊血病の特効薬だと信じられていたことも関係しています。この時代の船は、水の代わりとして、ラムにライムと砂糖を加えたラムパンチを常備していました。ビタミンC欠乏から起こる壊血病には、このライムが効いていたのですが、20世紀まで壊血病の原因は分からなかったため、ラムが効くとされ、全ての船乗りに欠かせないものとなったのです。

「アグリコールラム」の誕生と他国のラム酒造りに与えた影響

その後、ナポレオンが、イギリス以外のヨーロッパを勢力下においていた時代をきっかけに、ラムはまた大きな転機を迎えます。1806年の「大陸封鎖令」を皮切りに、マルティニークなどのフランス植民地産の砂糖が、フランス本国にも入らなくなり、砂糖の価格が急騰してしまったのです。

そこでナポレオンは、1811年に寒冷地でも育つ甜菜の栽培をフランス国内に発令し、それを原料とする甜菜糖の製造を奨励したため、フランス国内で当時の全世界の砂糖生産量の内5%を造り出すまでに成長しました。これにより、フランス領植民地の製糖会社は、フランス本国での砂糖の市場を失い、次々と倒産したのです。

国内では需要が伸びているラム酒。しかしながら、原料である糖蜜が得られないというジレンマが生まれていたこの状況を打破するために生まれたのが、これまでとは異なるラム酒造り。今までのように糖蜜からラムを造るのではなく、サトウキビジュース100%をそのまま全部、発酵、蒸留する方法で造られたこのラムを「アグリコールラム」といいます。

この製法が確立された、マルティニークのラム酒は非常に評価が高かったため第一次、第二次大戦中には、マルティニーク産という名前を付けて、極端に薄めた粗悪な偽物ラムが出回りました。こういった風評被害や偽物被害を避けるために制定されたのが、AOC(原産地統制呼称)。1996年にマルティニークのアグリコールラムはAOCを取得。現在でも、海外県のラムでAOCを得ているのはマルティニークのみという点も、非常に価値が高いといえます。

このようにラム酒は、古くからフランスの政治経済とかなり密接な関わりがありました。そして、フランス産(フランス植民地産)のラム酒は、他の国のラム酒に大きな影響を与えてきたのです。

国によって違う味わい!世界“3大ラム酒”の違いを解説

一言でラム酒と言っても、その味わいは様々。その中でも、国ごとの特徴があり大きく分けて「フランス系」「スペイン系」「イギリス系」の3つのタイプがあります。

ブランデーやワインのようなアプローチで造られる「フランス系ラム」

歴史部分でも述した通り、フランス系ラムはブランデー、特にコニャックの技術を踏襲していることが最大の特徴。フランスの造り手は、現在でもサトウキビからブランデーを造っているという意識でラムを造っているため、コニャック同様、V.S.O.P.やX.O.などの等級を用いたり、熟成年数の異なるラムを垂直にブレンドさせることで、その銘柄の味わいを生み出しています。

また、ブランデーだけではなく、ワインの観点からの製法も見受けられます。例えば、その年の一番出来が良い畑のサトウキビだけを使ったラムを、特別バージョンとしてリリースしたり、通常だったら3~10種類のサトウキビをブレンドしたジュースを原料とするところを、単一品種だけを原料にしたラムをリリースするなどワインでよくみられるアプローチで造られるラム酒はフランス系のみだと言えるでしょう。

味わいについて。フランス系はアグリコールラムが多いため、サトウキビ本来の風味を活かしつつ、香り豊かで繊細なもの。これはサトウキビから砂糖を造らずそのまま全部を原料にしているから。極端に甘いと感じるラムはなく、香りは甘くても口に含むとシャープに感じるタイプが多く、ボディは軽めから重めまで幅広く存在します。また、糖蜜原料のラムも、フランス系はアロマティックでドライ目な味わいのものがほとんどです。

世界売上No.1ブランドもこれ!最も主流「スペイン系ラム」

中南米カリブはスペインが全て領土にしていた影響もあり、最も造られているのがスペイン系ラムですが、同じスペイン系でも、カリブ海と中南米では異なります。

カリブ海系のラム酒は、19世紀にドン・ファクンド・バカルディ・マッソがキューバで「ロン・リヘロ(ライトラム)」という製法を確立した後、キューバ革命後に多くのブランドがプエルト・リコやドミニカ共和国などに亡命したため、ライトでスムースなテイストがほとんど。ストレートで飲み飽きないあたりの柔らかい、優しい味わいが特徴です。またフルーツやハーブ、香辛料など何にでもマッチし、また食中酒にも食後酒にもなるようにあらゆるシーンに合うと言えます。

一方、中南米の大陸ラムは、もともとスペインがもたらしたシェリーやシェリーブランデーの技術を踏襲しており、今でもソレラシステムを用いて、日本で言うところの鰻のタレのように、何十年と重ねていく熟成をしている蒸留所が多いのです。もともとスペイン人が好むような、ボディが厚く、かなり甘味が強いラムが多いため、どちらかといえば食後に葉巻やスイーツと合わせて楽しむのがオススメです。

ウイスキーのようなラム酒!?「イギリス系ラム」

イギリス系ラムは、スコッチウイスキーの技術を踏襲しています。特に、単式蒸留器で造ったラムと連続式蒸留器で造ったラムをブレンドするなど、ブレンデットウイスキーのブレンド技術を踏襲していると言えます。製品のグレードが高くなるほど、単式蒸留器で造られたラムの配合率も高くなることが多いです。また複数の異なる蒸留所(異なる国)のラムをブレンドすることもあります。

骨太で濃い味わいが最大の特徴で、特にガイアナやジャマイカで造られるラム酒にはその傾向が顕著に現れています。その他の地域はしっかりとした骨組みを感じながらも、口当たりはマイルドなタイプが多いです。

フランスで初開催!ラム酒の一大イベント「MONDIAL DU RHUM / モンディアル・デュ・ラム」

世界で最もラム酒が人気な国の1つフランス。近年、国内では蒸留酒の中で唯一若年層からのニーズが伸びているというデータがあることからも、盛り上がりを感じられます。また、主に海外県をラムの産地としていたフランスですが最近では本土に新しい蒸留所がいくつも誕生したことで、世界からより一層注目を集める存在になりました。

そんなフランスで、2024年2月13日~15日の3日間、パリの中心にあるブロンニャール宮(パリ旧証券取引所)を会場に開催されるイベントが「MONDIAL DU RHUM / モンディアル・デュ・ラム」です。

フランス国内初開催となるこのイベントは、世界のラム酒エコシステムのキーパーソンが3日間にわたって一堂に会し、ラム酒産業の未来を形作る主要な課題とチャンスについて議論するというもの。バイヤーや公的機関、ラムのバリューチェーン全体の関係者がパリに集結。その数は、出展者50社以上、参加国22か国を予定しているのだそう。テイスティングにフォーカスした従来のイベントとは異なり、生産者から輸入業者などラム酒のエコシステム全体にスポットを当てているのも特徴です。

豊かな未来を実現させるために、エコシステムなどのこともしっかり考えるラム酒業界の今後を知るためにも注目のイベントです!

イベント詳細はこちら

革新的でクラフトなラム酒が続々!フランス系ラム酒から目が離せない

世界的に見ても、最先端の動きが起きているフランスのラム酒業界。若い起業家たちが参入したことで、クラフトマンシップの高いラム酒が続々と発表されているようです。

これまで、ラム酒の違いにあまり興味がなかった方や、ラム酒初心者の方も国ごとの違いを知ることでより一層ラム酒を楽しめるはず!

お店や酒屋でラム酒を手に取った際は、「このラムは何系のラムなんだろう」と意識して選んでみてはいかがでしょうか?

※飲酒は20歳から、飲酒は適量を。飲酒運転は法律で禁じられています。妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。
《nomooo編集部》

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